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【書評】「ポーカー・フェース」(沢木耕太郎)を読んでの感想

はじめに

「バーボン・ストリート」、「チェーン・スモーキング」につづく沢木耕太郎さんのエッセイ集です。
本書は、2011年に刊行されています。前の2冊に比べると、最近に書かれたものです。(もう10年以上前ではあるのですが。)
書かれている映画が見知っているものであったり、Amazonなんかも出てくるので、身近な感じがします。
久しぶりに刊行された本でしたから、書店で見つけた時には驚きました。
期待して、ページをめくった記憶があります。

目次

全体の感想

ある人物について書かれたエッセイが印象に残る本であったと思います。
特に、高峰秀子さんが印象的でした。
一つのエッセイの中でも、話題が変わっていきます。
しかし、なめらかで、バラバラな感じはしないんですね。
どのエッセイも終わり方がシュッとしていいるのも特徴です。
また、ミステリアスな感じの文章もあって、読み進めるにつれて引き込まれていくのも楽しいんです。
本書は、作家との思い出が良い本になっています。
先輩の作家さんから沢木さんが教わっている場面が特に印象的でした。

印象に残ったエッセイ3選

挽歌、ひとつ

女優の高峰秀子さんについて書かれた1篇です。
高峰さんが沢木さんにかける言葉が深く、優しいんです。
師弟のような、年齢の離れた友人同士のような感じがします。
終わり方は、強い気持ちがこもっているように思います。

なりすます

沢木さんのエッセイらしいエッセイではないでしょうか。
テーマは「偽物が本物になりすます」ことです。タイトルの通りとなっています。
「バーボン・ストリート」、「チェーン・スモーキング」からの流れを感じる1篇だと思いました。
井上ひさしさんと、井伏鱒二さんのお話がとても興味深かったです。

沖ゆく船を見送って

テーマは、ギャンブルです。
しかし、話題はいろいろと変わっていきます。
長財布、無人島、ギャンブルへとお話が進んでいきます。
お酒など飲みながらの話という印象があります。

印象に残った文章

'しかし、因果の人があまりにも複雑に絡み合い、もつれ合い、それを解きほぐすことのできない私たちには、結果の手前にあるはずの原因の見極めがつかなくなる。
なぜそうなったのか。なぜそうならなかったのか。どうして私が助かり、あの人が助からなかったのか……'

> 「ポーカー・フェース」(新潮社)より引用

「運」について書かれたエッセイの中の文章です。
沢木さんの「運」についてのとらえかたが書かれた部分だと思います。
ある分野を極めた人や、極められなかった人を多く見てきた沢木さんの言葉なので、重みがあるな、と。

おわりに

「挽歌、ひとつ」は、少し寂しい雰囲気のエッセイです。
このようなエッセイが入っているところが、前2作とは異なっているように思います。

沢木さんの生活の変化が、エッセイにも表れているのではないでしょうか。
そのへんも、独特な味わいとなっています。
ぜひ、読んでいただきたい1冊です。

 

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