はじめに
この1篇は、沢木耕太郎さんが映画を観て書かれたエッセイとなっています。
沢木さんは、映画の評論も多く書かれています。個人的にはこの1篇はそれらよりも少しライトなものになっていると思います。
ただし、内容が軽いという意味ではありません。
映画の内容を掘りさげる方向ではなく、沢木さんの仕事や、日常の面からの洞察にページが割かれており、
映画のレビューという面がそこまで表立っていないと思うんですね。
印象に残る映画評となっています。
目次
全体の感想
この1篇を読むと、映画が観たくなると思います。
映画を観て、感想をしっかりと考えることの楽しさが伝わってくるからではないでしょうか。
ロバート・キャパについて知るきっかけとなる1篇でもあります。。
ロバート・キャパの著作についても触れらている箇所があって、読んでみたくなりました。
本を読むことで、次に読む本が見つかるというのは良いものだと思います。
沢木さんのエッセイを読むと、読んでみたくなることが多いんですね。
そこも魅力ではないかと思います。
本編の始まりは、沢木さんが偶然、ある映画を観ることになったことです。
興味がない映画を観ても、予想外の味わいを得られる。そんな楽しさが伝わってくる1篇でもあります。
キーワード3選
1.映画が好きになる
映画を観て、あるテーマについて考えるというのは、多少なりとも経験があると思うのですが、
沢木さんが深く洞察している思考を文章として読むと、映画がとても魅力のあるものに思えます。
映画を観ることが好きになるきっかけになるのではないかと思うんですね。
2.ジャーナリスト
沢木さんの描くテーマの一つにジャーナリズムというものがあります。
社会の事象を取材し、丹念に描いていくことをされていた沢木さんから観るジャーナリストの世界への感想というのは一味違ったもののように思えます。
映画の評論から、仕事で取り扱っているテーマを掘り下げていることに、この1篇の奥深さがあると思うんですね。
3.逆転
2本の映画のテーマは人生における逆転と沢木さんは位置づけています。
映画のテーマとしては、珍しいものではないと思います。
ありふれた映画への感想という側面もある1篇だと言えます。
エッセイとしての読みやすさ、親しみやすさ、良い意味での軽さの要因は、
このありふれたテーマの映画を観たということによるものだと思います。
印象に残った文章
こんなことをしていたら、命がいくつあっても足りはしないぜ、という撮り方をする。
> 「象が空をⅡ 不思議の果実」(文春文庫)より引用
映画の中のジャーナリストへのコメントの1つです。
沢木さんらしい文章な気がするんですね。
内容と少し離れて、この文章、特に「命がいくつあっても足りはしないぜ」という表現が頭に残っています。
おわりに
映画を観たくなる。この一言に尽きるエッセイだと思いました。
2つの映画への深い洞察を伴う評論ではあるんですが、軽さも含んでいます。
エッセイとしての体裁の中に含めた深い洞察と、固有の表現が相まって、印象に残っていることに気付きます。
映画が好きな方におすすめしたい1編です。
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