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【書評】「記憶と資料(像が空をⅢ 勉強はそれからだ)」(沢木耕太郎)を読んでの感想

はじめに

ノンフィクションについての考察が書かれた1篇です。
「少年少女のためのノンフィクション論」と副題がついており、若い人に呼びかける形式で書かれています。
まだノンフィクションを読んだことのない人への読書案内といった雰囲気もあると思います。

考察の題材となっているのは、沢木さんの代表作である「深夜特急」です。
深夜特急」がどのように書かれたかというのを知ることができる作品でもあるんですね。
旅行記の書き方が書かれた1篇としての側面も持ち合わせているとも言えます。

目次

全体の感想

一読後の印象としては、深夜特急を読んだ方向けの1篇であると思いました。
内容に踏み込んだ表現も含まれますから、読んだ後の方が楽しめるんですね。

一歩ひいた雰囲気で、いかに書かれたのかが書かれています。
このような旅行記の方法論を知れるのは貴重であると思います。

深夜特急」の印象が強いのですが、本作品の主題は、ノンフィクションとは?というものです。
端的に語りつくすのは難しいテーマではありますが、沢木さんならではの観点から、ノンフィクションについての考察が書かれています。

キーワード3選

旅とお金

沢木さんが旅の中でつけていた出費の記録について書かれています。
決して、潤沢な資金のない中での旅です。
お金について、記録することは、旅を続ける上で必須の行為であったと思います。
後から、見返した時にまた違った意味を沢木さんは見出し、旅行記としたことが分かります。

時間

深夜特急」は沢木さんが旅を終えた後に書かれた本です。
時間が経った後に旅を思い返しながら、書かれたものだと沢木さんは語っています。
記憶は薄れてしまうんじゃないかと思うのが普通だと思います。
どうやって書くことができたのか、という点がこのエッセイの一つの主題になっています。
ぜひ読んでみていただきたいですね。

書くこと

旅行記を書くことは、もう一度旅をするようなことではないかと沢木さんは書かれています。
旅の途中では、気付けなかったことに気付いたり、新しい知識と旅の情景がつながったりするのだと思います。
沢木さんの書いたという経験が、旅行記を書くことの良さを伝えているように思えました。

印象に残った文章

僕は実際に旅をしてから十年後にもういちど旅をし直したといえるかもしれません。

> 「像が空をⅢ 勉強はそれからだ」(文春文庫)より引用

旅行記を書くことが、旅の再確認になることが伝わってきます。
書くという行為の良さを感じられました。
ノンフィクション作品では、そのことがより顕著にあらわるのかな、とも思いました。

おわりに

深夜特急」がいかに書かれたのかを知れたのは、とても貴重な経験でした。
執筆の技術について書かれたものはあまり目にできないと思います。
読みやすい形で方法論が提示されており、ノンフィクションが好きな方は楽しめるのではないでしょうか。
一方で、ノンフィクション作品とはどんなものかということにも言及されている1篇でもあります。
ノンフィクションに関心がある方はぜひ一度、読んで欲しい作品です。

 

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