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書評のブログ。

【書評】「なかんずく(霊長類ヒト科動物図鑑)」(向田邦子)を読んでの感想

はじめに

向田邦子さんが子供と言葉について書いたエッセイです。
言葉への感覚が独特で、かつ鋭いんですね。
分かるなあと、うなづきながら読める一遍です。

目次

キーワード3選

言葉を覚える、使う、繰り返す

子供が新しい言葉を覚える際に何度も使う姿が描かれます。
とても微笑ましい描写です。
向田さんの子供への視線というのが優しいいんです。

英語を学ぶ

向田さんの言葉の体験談として、英語を学んだ際のお話が出てきます。
何だか、うまく使えず、もどかしい。
そんな体験が自分にあったことのように思えます。
読み手の共感を引き出す向田さんらしいエピソードです。

言葉

この一遍を読んでいて感じるのは、向田さんが言葉を好きなんだなということです。
職業柄、ということもあるとは思いますが、やはり言葉に関心を持ったひとだったんだろうなと思うんです。

印象に残った文章

こうなっては証文の出し遅れである。

「霊長類ヒト科動物図鑑」(文春文庫)より引用

言葉を使いそびれたときの感覚を言い表した表現です。
的確で、すごく印象に残っています。
正直、前後の文脈を抜きにして覚えてしまっています。

おわりに

冒頭は日記のように始まり、最後に明確な結論があるということでもない。
日常で感じることをつらつらと書いたように感じるかもしれない一遍です。
でも、向田さんにしか書けない感覚が詰まった作品だと思います。