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書評のブログ。

【書評】「ポートレイト・イン・ジャズ」(村上春樹・和田誠)を読んでの感想


はじめに

有名なジャズミュージシャンについて村上春樹さんによって書かれた本です。
和田誠さんの絵と文章が一緒に載っています。
村上さんのジャズへの造詣の深さに本当に驚かされます。
ミュージシャンの紹介という側面も当然ありますが、村上さんの感じたことが詰まった文章になっています。

目次

 

キーワード3選

ジャズを聴きたくなる

この本を読んで、第一の感想はジャズを聴きたくなるというものです。
ジャズに詳しくはないのですが、少し聴いてみたいというときに手にとりました。
ミュージシャンの魅力がたっぷりと詰まっているんですね。
そして、この本だけでは、音楽を聴くことができない。つまり、魅力の大部分を知ることができないんです。
1人1人のエピソードを読むたびに、その人の音楽を聴いてみたくなったことを覚えています。

絵が魅力的である

和田誠さんの絵がそれぞれのミュージシャンの文章についています。
絵の魅力が加わって本の力を何倍にもしています。
姿を知らないミュージシャンも多かったのですが、イメージがこの絵からできていました。

とくに良いなと思ったのは次の4人の絵です。

文章と音楽の違い

当然のことなのですが、文章と音楽は違うんですね。
実際に聴いてみての印象が一致するとは限らないのは当然のことだと思います。
何曲か聴いてみて、印象が変わったこともあります。
文章と音楽の違いを感じる経験ができるのもこの本の魅力だと思います。

とくに聴きたくなったミュージシャン

モダン・ジャズ・カルテット

グループということで、目をひかれましたね。
他のミュージシャンはやはり一人ずつ紹介されているので。
グループの名前もいいな、と。

ファッションの洗練された様が伝わってきます。
メッセージを強く持っている印象を村上さんの文章から感じられ、是非聴きたくなりました。

グレン・ミラー

人気の絶頂の時期に第二次世界大戦に空軍の少佐として従軍し、亡くなってしまう。
その生涯に圧倒されました。
映画の題材になっていることも本書からから知りました。
ジャズミュージシャンの持っているエピソードは皆圧倒されるようなものばかりなのですが、その中でも格別なものだな、と。

あまり録音は残っていないようですが、是非聴きたいなと思ったミュージシャンでした。

デューク・エリントンオスカー・ピーターソン

2人が一緒に書かれているわけではないのですが、各人ともに力強さを持った演奏家という印象を受けました。
パワーのあるジャズの演奏というものがはっきりとイメージできず、知りたいと思ったのを覚えています。
2人ともピアニストであることも興味深かったですね。

チェット・ベイカー

青春という言葉を中心に置いた文章が印象的でした。
小説の中の1節のような終わり方もいいんですね。
ジャズミュージシャンにうっすらと持っていたイメージ、充実した時期の短さを感じさせられ、聴いてみたくなったのだと思います。

実際聴いて、しっくりときたミュージシャンでもありました。
なんとなく聴きたくなるんですね。

印象に残った文章

'楽曲解説ではなく、ジャズを聴く気分やジャズが持っている力をこんなに的確に文章にできる人を、ほかに知らない。'

「ポートレイト・イン・ジャズ」(新潮文庫)より引用

あとがきに書かれた和田誠さんの文章です。
この本の魅力を伝える文章として、これ以上のものはないと思います。

おわりに

ジャズに興味がある人におすすめの一冊です。
深く知っていくきっかけになる本ではないでしょうか。

ジャズミュージシャンのエピソードは多彩で、その魅力を伝える本はほかにもあります。
興味のある方は、そちらの本を読んでみても楽しめるかもしれません。

ぜひ、手にとってみていただきたいですね。