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書評のブログ。

【書評】「走ることについて語るときに僕の語ること」(村上春樹)を読んでの感想

はじめに

村上春樹さんが、ご自身のランニングの経験を書き綴ったものになります。
練習や、参加したレースについて、また、走ることと小説家としての生活とのかかわりについて書かれています。
一遍ごとのつながりはあまりなく、テーマごとに書かれている印象ですが、走るということが一貫したテーマとなっています。

走ることの良さだけが書かれているというよりは、個人的な所感という感じが強い内容です。
地道にレースに向けて走りこんでいくことの記録であり、走ることを継続してきたことの工夫の思い出が印象に残りました。

読後、走ってみたいという気持ちになりましたね。

目次

キーワード3選

小説を書くことと走ること

小説を書くことと走ることの共通点が書かれています。
村上さんの中で、走ることが重要なものであったことが伝わってきます。
いかに継続していくか、といのがともに重要なのだと書かれていました。

物理的な体を感じながら、小説を書いているということ、そのための材料として、走ることが必要なのだと解釈しました。
小説家の方の感覚までは分かりませんが、体の感覚が思考に影響する感覚は何となく分かります。
頭を使うことを走ることで支えるという感覚が方向性として正しいんじゃないかな、と思いました。

ランニングを始めたきっかけ

村上さんがランニングを始めたきっかけも書かれていました。
小説家として書き続けていく上で、体を健康に保つことがいかに重要であり、そのための方法としてランニングを選んだ経緯が分かります。
質の高い小説を書くために、どのような姿勢で取り組んでいるかが分かる文章になっています。

・続けることと集中力

集中する時間を継続的に持つことの重要性が書かれています。
続けることの重要性とそのための工夫。
大事なことのためには、欠かせないことが痛いほど伝わってきます。

印象に残った文章

'暇を見つけては、せっせとくまなく磨き続けること。'

「走ることについて語るときに僕の語ること」(文春文庫)より引用

何にでも通じる大事なことかと。
走るという、ある意味苦痛を伴うことだからこそ、言葉の重みがあります。

おわりに

走っている時に考えていることは覚えていないことが多いです。
最初は余計な雑事が頭にあるけれども、徐々に消えていきます。

考えられなくなった時に、爽快感のようなものが思い出されます。
走る理由はそれなんじゃないかと思うんですね。

あくまでも個人的な感覚なんですが。

日常から少しの間だけ、切り離される瞬間を持てるという感じかな、と。

走りたくなる本ですし、走ること(または人によっては別のことになるとは思うんですが)を続けることの大切さが伝わってきます。

走ることの良さが伝わってくる本だと思います。