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書評のブログ。

【書評】「オリンピア ナチスの森で」(沢木耕太郎)を読んでの感想

はじめに

1936年に開催されたベルリンオリンピックを描いたノンフィクションです。
競技のみでなく、歴史、科学技術、そしてオリンピックを記録した映画の監督、レニ・リーフェンシュタールについても書かれています。
総合的にベルリンオリンピックを書いていると言えます。
本当に、情報量が多いんですね。
多彩な視点から、オリンピックを描いていて、オリンピックの裏側がよく分かります。

また、第2二次世界大戦前の、時代の暗さも伝わってきます。

目次

キーワード3選

科学技術

遠く離れた日本でベルリンで行われる競技のニュースを伝えるためにどのような科学技術が用いられたのか。
当時の科学技術を最大限に駆使し、新技術の開発もオリンピックをターゲットに行われていたことが分かります。
とにかく速く伝えることを目指す報道媒体の競争もとても興味深いものとなっています。

日本人選手

参加した選手たちの背景もしっかりと書かれています。
オリンピックは多くの競技があるため、必然的に選手も多いんですね。
初めてオリンピックに参加するような、日本スポーツ界の黎明期の雰囲気が伝わってきます。
各選手の生い立ちから代表となり、結果が出るまでの過程が丁寧に描かれています。

レニ・リーフェンシュタール

ベルリンオリンピックの記録映画を撮った女性監督です。
彼女の経歴はまさに多彩と言うほかありません。
本書では、ベルリンオリンピックを取材し、映画としてまとめあげたその背景に迫っています。
歴史の中の人物のような雰囲気さえあり、迫力があるんですね。
オリンピックをテーマにした本の中でも、本書が際立っているのは、この人物について深く描かれているという部分が一つの要因だと思います。

おわりに

沢木さんの書いたオリンピックの本として、とても読み応えのある本です。
競技の書くにしても、選手の背景を余すことなく書いていますし、観点として勝者も敗者もしっかり取り上げられています。
情報がぎっしりとつまっていて、取材にかけた時間は想像するのも難しいくらい膨大なものだったことが伝わってきます。

別のオリンピックを沢木さんが書いたものを是非、読みたいなと思いました。
1996年のアトランタオリンピックを取り扱った、「オリンピア1996 冠〈廃墟の光〉」という本も読んでみたくなりました。

ぜひ、スポーツが好きな方は読んでみてください。