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【書評】「像が飛んだ(沢木耕太郎ノンフィクション 9 酒杯を乾して)」(沢木耕太郎)を読んでの感想


はじめに

ジョージ・フォアマンが42歳でボクシングにカムバックした際のスポーツノンフィクションです。
じっくりと時間をかけて、タイトルマッチに挑む姿が印象的です。

対戦するイベンダー・ホリフィールドの雰囲気も合わさって、浮ついたところのない試合であるように感じました。
周囲の熱狂と当事者の対比は当然ながらあります。
そのある意味華やかな世界の中で、静かに閉じられた人間のドラマを味わえたように思います。

目次

キーワード3選

モハメド・アリ

ジョージ・フォアマンがカムバック前にチャンピオンを奪い合った相手がどう捉えているのか。
試合の観客席に訪れたモハメド・アリは試合の結果をどう思ったのか。
モハメド・アリにしか分からないことではあるんですが、誰もが気になる点に触れられてました。

成熟

フォアマンが試合にのぞむ姿からは、落ち着きを持った人間であることが伝わってきます。
キリスト教の伝道師をしてきたこともその要因でしょう。
ボクシングでトップレベルで成功し、また挫折を味わった人間の成長を感じさせるものでもあります。
様々な出来事を経て挑むボクシングの試合を楽しもうとするフォアマンの姿は、非常に印象的なものでした。

ビジネス

イベンダー・ホリフィールドとのタイトルマッチは興行であり、大きなビジネスです。
2人の周囲の人間はそのことを当然のこととして受け止めているんですね。
勝つことはビジネス上の成功に間違いなく直結します。
ただし、その後の人生への影響は大きい。良くも悪くも。
そのことを関係者全員が知っているということも、この作品に独特の雰囲気をもたらしていると思います。

合わせて読んでほしい作品

薄暮の海

この文章は、「酒杯を乾して」のあとがきとして書かれたものです。
沢木さんがフォアマンを取材する背景を知ることができます。
像が飛んだをより楽しめるようになると思います。

おわりに

ボクシングが好きな方にはおすすめな作品です。
沢木耕太郎さんが書いたボクシングの作品と合わせて、ぜひ読んでみてほしいです。