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書評のブログ。

【書評】「するりベント酒」(久住昌之)を読んでの感想

はじめに

久住昌之さんがコロナの時期に書いた、弁当とお酒について書かれた食事に関するエッセイです。


目次

 

キーワード3選

 

日記的であること

ページを捲るごとに、日常の記録であることが伝わってくるんですね。
同じ1日、食事はないということが改めて認識されるというか。
もちろん、お弁当、お酒を毎回変える工夫はされていますし、変化をもたらすための工夫の描写もあるんです。
そこが味わい深いとも言えるし。
でも、些細なことで、予定が覆ったり、思わぬ出来事に出会ったりしている。
食事にフォーカスされてはいるけど、日常ってこんなことが起こるんだよな、と感じたんですね。
1人で食べるお弁当というのは、地味にも思えるんですが、鮮やかで。
日常の中の小さな彩りが記録されたことで重みを持ってくるってのがあるんじゃないかな、と。

コロナの時期であること

こんな時期もあったなと思いました。
同じような時間を過ごしていたなと、思い出されるんですね。
特に当時、目にしていた言葉が活字になって文章にのってくると、少し客観的なことになった不思議な感じがします。

移動

お弁当を食べる場面が移動中であることも多いんですね。
久住さんがいろいろな場所に行かれて、お仕事をされているということなんですが。
日記の中で移動というと、特別なことという感じがすると思うんです。
しかし、これだけ続けて書かれていると、日常なんだな、と自然に思えてきます。
あまり、特別感がなくなるというか。
日記のように書かれたものの中に、旅という非日常を含めることで、多面的な感じを持たせているように思えました。
そこが肩肘はった感じでなく、自然になっているんですね。
独特の読み味はこんなところにもあるのではないでしょうか。

おわりに

読みやすくて、すっと読める本でした。
そして、不思議と何回も読み返せるんですね。
久住さんの文章が好きな方にはぜひ読んで頂きたい一冊です。