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書評のブログ。

【書評】「雑文集」(村上春樹)を読んでの感想

はじめに

長い期間に渡って様々な媒体で書かれた短い文章が集められた本です。
村上春樹さんの小説やエッセイをある程度の冊数読んだ後に手にとる本になるとは思います。
ひらたく言えば、初心者向けではないんですが、すごく良質な本だと思います。
村上さんの作品がお好きな人には、是非読んで頂きたいです。

以前に読んだ本について書かれた内容が別の角度から書かれているというのは興味深いですね。
とりわけ、アンダーグラウンドについて書かれたものは、ずっしりときました。
感想が実際のところ薄れていたのですが、またくっきりと思い出されました。
視点の違いが輪郭をはっきりとさせているような感じがします。(年月によるものもあるのでしょうが。)

レイモンド・カーヴァーの作品を翻訳した本を出版されていたことは知っていたが、全作品の翻訳を手掛けていたとは知りませんでした。
小説家になって割とすぐにカーヴァーに会っていたことには驚きました。
読んだことはないのだけど、是非読んでみたいですね。

グレート・ギャツビースコット・フィッツジェラルドへの思い入れが伝わってくるのも印象的でした。
アメリカ文学というものが大事なものであったことが伝わってくるというか。

文章の性質上当然ながら、短くまとめられていてさっと読めるものが多く入っている。
エッセイとはまた違った読後感があります。
所々、少し長めでしっかり読ませるものがあるのもアクセントになっているんですね。
ものすごい計算されているんじゃないかと思う。
上手な仕事だな、と。

多くの文章を読み、自分の中で再構築して、文章をたくさん綴ってきたこと。
文章の質の高さというのは、その反復された量からしか生まれないのかな、と。
素人ながら、そう思う他ないですね。

目次

キーワード3選

結婚式へのメッセージ

村上さんが贈った結婚式へのメッセージが載っているんです。
貴重な文章だと思います。
短いんですが、暖かみのある言葉になっています。

世界の終わりとハードボイルドワンダーランド

この作品が書かれた背景について書かれた文章があります。
構造が印象的な本作の製作の裏側(部分的ではあると思いますが)を知れるのは読者としては楽しいのではないかと思います。

安西水丸さんと和田誠さん

村上さんの文章ではないのですが、お二人の対談も楽しく読めました。
多方面の文章を集めた本ではあるのだけど、お二人の存在が1つの筋道となっている気がするんですね。

おわりに

小説の良さへの信頼が根底にあるなと思いました。
自然と小説が読みたくなるんですね。信頼感がこちらにも移ってくるのかもしれないし、あるいは、その信頼を自分の中に持ちたいのかもしれない。
読みたくなった作品がいくつもあります。少しずつ読んでいきたいですね。
こういったいわゆる上級者向けの本を読むことは少ないのだけれど、こういった本もいいものだな、と。