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書評のブログ。

【書評】「運命の受容と反抗(像が空をⅠ 夕陽が眼にしみる)」(沢木耕太郎)を読んでの感想


はじめに

沢木耕太郎さんが、柴田錬三郎さんについて書かれた一遍になります。

目次

全体の感想

文章の始まり方がとても自然で、流れるように主題に入っていくんですね。
マクラにあたる部分も印象的です。
すっとテーマに入っていって、すとんと着地する感じの一遍でした。

キーワード3選

対談

マクラはある対談での挿話になっています。
このお話自体が魅力のあるものになっていると思いました。
登場する人物、本、できごと、全てが想像の範疇の外にあるような話です。

降りて、降りない

本編の最も重要な言葉ではないかと思います。
難しい考え方ですね。
こういうことを実践できる人には凄みがあるんだろうな、と。

時代小説

沢木さんが時代小説の世界に没頭していた時期があることが書かれています。
柴田錬三郎さんにとって時代小説を書くというのがどういうことだったのかということへの考察が書かれています。
時代小説の雰囲気と沢木さんの作品に通じるものがあるというようなことが書かれていて、妙に納得できました。

印象に残った文章

抗したところで結局は何も変わらないかもしれないが、抗してみるだけの価値はある、と。

 > 「像が空をⅠ夕陽が眼にしみる」(文春文庫)より引用

沢木さんが柴田さんの作品に流れるテーマとして書かれた一文です。

本作品のテーマを端的に表していると思います。

このような視点で沢木さんの作品を読み解いてみるのもいいかもしれませんね。

おわりに

一人の作家さんの作品の変遷と生き方の共通点をごく自然に書かれています。
好きな作品の著者について知りたくなるのは、誰にでもあるんじゃないかと思うんですが、沢木さんもそういった部分があったんだろうなと思えました。
少年時代に没頭したというのがいいですね。

興味深く読めた一遍でした。