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書評のブログ。

【書評】「ラオスにいったい何があるというんですか?」(村上春樹)を読んでの感想

はじめに

村上春樹さんの旅行記がまとまった本です。
旅先は国内から外国まで様々です。

一つ一つが短くまとまっていて、読みやすいですね。

この本のテーマの一つは、再訪と再会だと思います。
一度、住んだ場所を訪れたり、旧知の知り合いと旅をする。
2回目の体験というのが、共感できる部分になるのではないかな、と。
誰しも、同じような経験が見つかるのではないかなと思います。

さらりと読めて、旅の楽しさが味わえる一冊です。

目次

キーワード3選

ボストン

村上さんは野球も好きらしいんですよね。
ボストンについてのエッセイの中では、ボストン・レッドソックスについて書かれています。
チームについての考察というよりは、観戦ガイドのような趣きです。
野球がお好きなのは知っていたのですが、野球場で観戦している姿はあまり想像できなかったので、意外な感じでした。
独特の雰囲気を持つフェンウェイ・パークの楽しそうな雰囲気が伝わってきます。

食べ物についても書かれていて、本当においしそうなんです。
ボストンの楽しみ方として、欠かせないのが食べ物ということで、おすすめの食材なんかが書かれています。

熊本

熊本再訪は、熊本の歴史を中心に描かれています。
夏目漱石の住んだ家や、阿蘇山、うなぎ屋さんなど、熊本の見どころの話題が書かれています。

村上さんの日本国内の紀行文はあまり読んだことがなかったので、興味深かったですね。
落ち着いた雰囲気での旅の文章という感じです。

イタリア

イタリアのトスカナ地方を再訪した旅行記の中で印象に残ったのはワインの話題ですね。
村上さんの文章では、アルコールが欠かせない要素になっていると思うんですが、イタリアのワインを楽しむ姿が書かれています。
田舎でつくられるワインのおいしさが伝わってきます。
ワインを目的に旅するというのも、村上さんらしいなと思いました。

印象に残った文章

'しかし良きことも、それほど好ましくないことも、すべては時間というソフトな包装紙にくるまれ、あなたの意識の引き出しの中に、香り袋とともにしまい込まれている。'「ラオスにいったい何があるというんですか(文春文庫)」より引用

一度住んだ場所がどんなものかというものを表現した文章です。
本当にそうだな、と感じる一文です。

おわりに

「遠い太鼓」、「やがて哀しき外国語」といった本で書かれている国への再訪が多いので、合わせて読むとより楽しいかもしれません。
初めて見たものを書いたエッセイと、しばらく経ってから感じたことにはやはり違いがあると思います。
落ち着いて味わっているという感じが伝わってくるというか。

多彩な国、地域の旅が載っているので、楽しい一冊だと思います。