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書評のブログ。

【書評】「ペーパーナイフ 路上の視野Ⅱ」(沢木耕太郎)を読んでの感想


はじめに

沢木耕太郎さんが本と作家について書いたものをまとめた本です。
紹介されている本は実に多様。
とても興味深いですね。

タイトルにもなっている「ペーパーナイフ」は書評の連載をまとめたもので、
こんな本があったのかと驚かされ、その本を読みたくなります。

短く書かれた書評からは、沢木さんの読書に対する姿勢が垣間見れます。
厳しく、向き合っていることは間違いないと思いますね。

本の作り手である作家に対する論評もまた、面白いんですね。
実際に会ったことがある方も多いとは思うんですが、書かれた文章を通して、作家さんの思想や生き方を捉えているんですね。
一人の作家さんの本を全て読みきって、深く考察して、ということも面白さはこの本で知ったように思います。
そもそも、一人の作家さんの本全てを読むとこんなことが分かるんだという、新鮮な感動がありました。

この本に出てこない本で話が外れてしまうんですが、小田実さんの「何でも見てやろう」という本は沢木さんの文章を読んで、知って、
すごい読みたくなって読みました。
読んでみると、沢木さんの所感とは違うものが自分に残ったんですよね。
他にも読んだ本がいくつかあるんですが、感想は違った。
やっぱり読書は読み手次第なんだな、と。基本的なことを体感しましたね。

目次

 

キーワード3選

多様な本

とにかく多様な本が登場してきます。
圧倒されます。

有名な作家が出てくる

多様な本が出てくるということで、著者の方の幅も実に広いんです。
知らない人たちばかりでした。

その中に、読んだことのある人が出てくると少し安心するというんですかね。
何でなのかはよく分からないんだけど。
向田邦子さんのことを書いた文章なんかは、落ち着いて読めます。
本当に何回も読んでます。

文章技術的な要素

文章を書く上での技術論も入ってきているんだと思います。
これはやはり避けてようとしても完全には無理なのかもしれませんね。
同じ作家さん同士だと、読みながら技術に目がいくでしょうし。

純粋な読み手からすると、分からないような技巧が入っているんじゃないかと思ってしまいますね。

印象に残った文章

そう一人合点して退場。

「ペーパーナイフ 路上の視野Ⅱ」(文春文庫)より引用

ペーパーナイフの最後の一文です。
個人的には、連載された文章の終わり方で最も格好いいものだと思います。

おわりに

私が沢木さんの本(作品)で知って読んだ本をざっと挙げてみると、

・何でも見てやろう(小田実
・剣(三島由紀夫
・うらおもて人生録(色川武大
麻雀放浪記阿佐田哲也
ロバート・キャパ写真集 フォトグラフス

偏っているなと思います。
沢木さんのルーツみたいなものを読もうとしていたのかなと思いますけど、ちょっと違う気もするし。

自分がよく読む作家さんの本を読むのは、自分で選ぶのとはまた違った感じがします。
興味が全くない本も読むことになりますし、新しく好きな作家さんが見つかるかもしれない。

そんなわけで、沢木耕太郎さんの本が好きな人は、是非読んでほしい本ですね。