Book Review Storage

書評のブログ。

【書評】「誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡」(木村元彦)を読んでの感想

はじめに

サッカーユーゴスラビア代表の名手であった、ドラガン・ストイコビッチについて書かれたノンフィクションです。
活躍された選手だったことはよく知っていたのですが、詳しい経歴は知りませんでした。
彼のプロサッカー選手として辿ってきたキャリアは言うまでもなく、とにかく凄い。
しかし、その一方でユーゴスラビア代表としてのもう一つの経歴が波乱に満ちていたことが分かります。
プロサッカーの世界だけでなく、波乱の時代の中をタフに生き抜いてきた人物であるとも言えます。
サッカーの才能に導かれ、時代の中をサッカーで生き抜いてきたという表現は大げさではないと思います。
とても読み応えのある作品です。

目次

初めて知ったこと3選

EURO2000での出来事

ユーゴスラビア代表として出場したEURO2000でどんなことがあったのかが書かれています。
活躍した印象もあったのですが、裏側では様々な苦闘があったことが分かります。
現役時代の終盤のストイコビッチの姿はとても印象に残りました。

マルセイユでの苦難

1990年のイタリアワールドカップでの活躍は知っていたのですが、その後のマルセイユ時代のことは知りませんでした。
怪我にあい、苦労していた時期でした。同時に、ユーゴスラビア代表としても、1992年のEUROへの出場がかなわなくなるという出来事があります。
ストイコビッチのサッカー人生が波乱ばかりであったことが分かります。

日本に来た時期のこと

自分の思い込みでしかないのですが、現役として最盛期に名古屋グランパスに移籍していたと思っていたんです。
実際には、29歳というサッカー選手としては、ベテランにさしかかる時期だったんですね。
(この辺は人によって違うとは思いますが。)
グランパス移籍後に、1998年のフランスワールドカップに出場していますし、EURO2000にも出場しているので、選手としては力を十分に維持していたと言えます。
日本での活躍は、長い選手キャリアの中で、苦労していた時代の後だったことを知りました。

おわりに

最後にストイコビッチのお父さんとお母さんへのインタビューが載っています。
飾らない両親の姿からは、ストイコビッチの波乱に満ちた選手キャリアは想像できないな、と思いました。
遠い異国である、日本で活躍し、強い印象を残す選手になるとは誰も想像しなかっただろうと思うんですね。

一方で彼自身の姿からは、とにかく芯の強さを感じました。
国家の激動からの影響を受けてきた人生だったと思います。
それに負けないように生きてきたのは間違いない。
本当に尊敬できる人物だと思います。

総じて、人生の困難に打ち勝つことの難しさが伝わってくる作品なのかな、と。
海外のサッカーがお好きな方に是非、読んで頂きたいです。