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【書評】「七色とんがらし(無名仮名人名簿)」(向田邦子)を読んでの感想

はじめに

「七色とんがらし」は、向田邦子さんの「無名仮名人名簿」というエッセイ集に所収されている一篇です。
「父の詫び状」を読んで、向田邦子さんのエッセイが好きになり、他のエッセイ集も読んでみたいと思ったのがきっかけです。
かなり期待して読みました。

目次

全体の感想

このエッセイは、向田さんの母方のおじいさんのお話です。
一緒に住んでいた時期があるそうで、当時の思い出が語られています。
向田邦子さんが書く他の家族のエッセイと同じような感覚になりました。
自分の家族と比較してしまいますね。
冷めている感じがあって、不思議とすっと入ってきますね。

キーワード3選

  1. 野球
  2. 小さなしあわせ
  3. おばあさん

1.野球

七色とんがらしとも、おじいさんともつながらないのではないでしょうか?
でも、野球のエピソードがいいアクセントになっているのです。
ここを読むと、お話を組み立てるのが本当に上手なんだなと思わせられます。
ぜひ、読んでほしいです。

2.小さなしあわせ

愚痴がこのエッセイのポイントだと思うんです。
そして、その対になっているものに小さなしあわせがあります。
好きなものを口にする時に嫌なことを忘れられる。
とんがらしは向田さんとおじいさんにとって小さなしあわせのもとだったんですね。

3.おばあさん

おじいさんの奥さん、つまり、向田さんのおばあさんです。
対照的な性格の2人なのですが、おじいさんが亡くなった後の一言のエピソードは印象に残りました。

印象に残った文章

'祖父は、愚痴をこぼす代わりに、おみおつけのお椀が真赤になるまで、とんがらしを振りかけたのだ。'

> 「無名仮名人名簿」(春秋文庫)より引用

年齢を重ねて分かることと思い出が結び付いて、描写が着地する1文です。
とんがらしのこのエッセイの中での意味合いが分かるんですね。

おわりに

子供の頃には分からなかったことを湿っぽくなく書くのが本当に上手だなと思います。
向田さんのお祖父さんは終わったことにぐじぐじとしない、我慢強い人であったと思うのですが、その思い出を描写する向田さんの文章もからっとしていますね。
冒頭の軽い挿話からはじまり、思い出の要所を抑え、さらっと締めくくられます。
向田さんの家族のエッセイと言えば、お父さんが有名だと思いますが、こちらも読み応えのある家族のエッセイだと思います。

 


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